中学受験では、親の言葉が子どもにかなり強く刺さります。
もちろん、親も悪気があって言っているわけではありません。
宿題が終わらない。
テストの点数が悪い。
同じミスを繰り返す。
塾代もかかっている。
志望校に届くか不安になる。
そうなると、つい強い言葉が出ます。
しかし、中学受験で親が言いがちな言葉の中には、子どものやる気を引き出すどころか、逆に追い詰めてしまうものがあります。
特に、次の5つは要注意です。
「なんでできないの?」
「前にもやったよね?」
「みんなもっと勉強しているよ」
「塾代いくらかかると思っているの?」
「〇〇禁止ね」
これらの言葉は、親としては注意や叱咤のつもりでも、子どもにはかなり重く伝わります。
中学受験では、塾で競争にさらされ、偏差値で比較され、宿題にも追われます。
そのうえ家でも責められると、子どもには逃げ場がなくなります。
この点については、中学受験でメンタルが崩れる子に共通する原因でも書きました。
家での言葉は、子どもを追い込むためではなく、立て直すために使うべきです。
なんでできないの?
「なんでできないの?」
これは、親がかなり言いがちな言葉です。
算数の基本問題を落とした。
前にやった単元を忘れている。
漢字をまた間違えた。
国語の選択肢で同じようなミスをした。
理社の暗記が入っていない。
こういう場面で、親はつい言いたくなります。
しかし、この言葉はあまり意味がありません。
子ども自身も、なぜできないのかを分かっていないことが多いからです。
分かっていないからできない。
定着していないから間違える。
類題で再現できないからテストで落とす。
それだけです。
「なんでできないの?」と聞かれても、子どもは答えられません。
そして、答えられないまま責められたように感じます。
本当に見るべきなのは、できなかった理由です。
知識が抜けているのか。
問題文を読み違えたのか。
計算ミスなのか。
解法の型が入っていないのか。
類題演習が足りないのか。
宿題を終わらせただけで、得点できる状態になっていないのか。
ここを分ける必要があります。
宿題についても、ただ終わらせるだけでは意味がありません。
類題で再現できて、テストで得点できる状態になっているかが大切です。
この点は、中学受験で宿題が終わらない家庭が見直すべきことで詳しく書いています。
「なんでできないの?」ではなく、
「どこで止まった?」
「何が分からなかった?」
「次に同じ問題が出たら取れるようにするには、何をやればいい?」
と聞いた方がいいです。
責めるのではなく、原因を分ける。
それだけで、親子の会話はかなり変わります。
前にもやったよね?
「前にもやったよね?」
これも、中学受験では非常によく出る言葉です。
親からすると、当然言いたくなります。
先週やった。
授業でやった。
宿題でもやった。
テスト直しもした。
家庭教師にも教えてもらった。
それなのに、また間違える。
親としては、「前にもやったよね?」と言いたくなるのは自然です。
しかし、これも子どもにはきつい言葉です。
子どもは、前にやったことを覚えていないから間違えているのです。
あるいは、覚えていても、別の形で出されると使えない。
つまり、問題は「前にやったか」ではありません。
「今、自力で再現できるか」です。
中学受験では、一度説明を聞いただけで定着する子ばかりではありません。
授業で分かった。
解説を読んで分かった。
親に説明されて分かった。
それでも、テストで取れないことはあります。
なぜなら、理解と再現は違うからです。
算数でいえば、解説を見れば分かる。
しかし、類題になると手が止まる。
国語でいえば、解説を読めば納得する。
しかし、自分で選択肢を選ぶとズレる。
理社でいえば、答えを見れば思い出す。
しかし、テストでは出てこない。
これは珍しいことではありません。
「前にもやったよね?」と言うより、
「前にやったけど、まだ自力で出せるところまでは来ていないんだな」
と見た方がよいです。
成績が伸びない子の多くは、復習や類題演習が足りていません。
難しい問題ばかりやって、基本や標準問題の再現性が低いままになっていることもあります。
この点は、塾講師・家庭教師として見てきた、成績が伸びなかった子の特徴でも書いています。
「前にもやったよね?」ではなく、
「もう一回、類題で確認しよう」
「次に出たら取れるようにしよう」
「分かったで終わらせず、できるまで戻そう」
と考えるべきです。
みんなもっと勉強しているよ
「みんなもっと勉強しているよ」
これも危険です。
親としては、子どもに危機感を持たせたいのだと思います。
同じ塾の子はもっとやっている。
上のクラスの子はもっと勉強している。
御三家を目指す子はこの程度ではない。
周りはもっと本気でやっている。
そう言いたくなる気持ちは分かります。
しかし、これは比較の言葉です。
中学受験の子どもは、塾で十分に比較されています。
クラス分け。
偏差値。
席順。
組分けテスト。
志望校判定。
周囲の優秀な同級生。
塾に行くだけで、子どもはかなり比較の中に置かれています。
そのうえ家でも「みんなもっとやっている」と言われると、子どもは逃げ場を失います。
中学受験でメンタルが崩れる子は、勉強が嫌いになっただけではありません。
比較され続けることに疲れている場合があります。
家でまで比較されると、
「自分は足りない」
「自分は下だ」
「親をがっかりさせている」
「どうせ自分はできない」
という劣等感につながることがあります。
家庭は、塾の延長であってはいけません。
家は、子どもを甘やかす場所ではありません。
しかし、子どもをさらに比較する場所でもありません。
この点は、中学受験で親子喧嘩が増えたら危険信号でも詳しく書いています。
「みんなもっと勉強しているよ」ではなく、
「今のあなたに必要なのは何か」
「今日は何を優先するか」
「まず取るべき問題を取れるようにしよう」
という言い方に変えた方がいいです。
他人との比較ではなく、今の子どもの課題に戻す。
それが大切です。
塾代いくらかかると思っているの?
「塾代いくらかかると思っているの?」
これは、かなり強い言葉です。
親の本音としては分かります。
中学受験にはお金がかかります。
塾代。
講習費。
教材費。
模試代。
受験料。
場合によっては家庭教師代や個別指導代。
かなりの負担です。
だから、子どもが宿題をやらない、テストの点数が悪い、やる気がなさそうに見えると、親は言いたくなります。
しかし、この言葉は、子どもにとってかなり重いです。
子どもは、塾代を払っていません。
家計の責任も負っていません。
親がどれだけ苦労しているかを、大人と同じようには理解できません。
それなのに、「お金がかかっている」と言われると、子どもは勉強の問題ではなく、存在そのものを責められているように感じることがあります。
「自分のせいでお金が無駄になっている」
「自分は親に迷惑をかけている」
「結果を出さないと家にいられない」
そこまで極端に言語化しなくても、かなりの圧力になります。
もちろん、親が中学受験にお金をかけていることは事実です。
しかし、それを子どもへの脅しに使うべきではありません。
お金の話をするなら、責める形ではなく、家庭の方針として伝えるべきです。
「塾に通うなら、授業と宿題は大切にしよう」
「お金も時間も使っているから、何を優先するか一緒に考えよう」
「今のままだと塾の使い方がもったいないから、やり方を見直そう」
この方がよいです。
特に、家庭教師や個別指導を使う場合も同じです。
お金をかけるなら、ただ授業を受けるだけではなく、原因分析、方向性の修正、類題での定着まで見てもらうべきです。
家庭教師をつけるべきか迷っている家庭は、中学受験で家庭教師をつけるべきか|迷っている家庭が考えるべきことも参考にしてください。
お金を理由に子どもを責めるのではなく、お金をかけるなら効果が出る使い方を考える。
その方が建設的です。
〇〇禁止ね
「〇〇禁止ね」
これも、中学受験家庭でよく出ます。
ゲーム禁止。
YouTube禁止。
漫画禁止。
テレビ禁止。
スマホ禁止。
友達と遊ぶの禁止。
親としては、勉強時間を確保したいのだと思います。
たしかに、ゲームや動画に時間を使いすぎているなら、ルールは必要です。
無制限に遊ばせてよいわけではありません。
しかし、すぐに「禁止」にするのは危険です。
禁止は、親にとっては簡単です。
取り上げればいい。
やめさせればいい。
ルール違反なら没収すればいい。
しかし、子どもにとっては、逃げ場や気分転換を奪われることがあります。
中学受験の子どもは、塾で競争にさらされています。
宿題も多いです。
テストもあります。
偏差値も出ます。
その中で、家での少しの楽しみまで全面禁止されると、心が折れることがあります。
特に、ゲームを完全禁止にすると、親子関係が悪化することがあります。
中学受験では、ゲームをどう扱うかはかなり重要です。
ゲーム禁止については、中学受験でゲームを禁止してはいけないでも詳しく書いています。
大切なのは、禁止ではなく設計です。
何分までならよいか。
先に何を終わらせるか。
どの時間帯ならよいか。
ルールを破ったらどうするか。
テスト前はどうするか。
ここを決めるべきです。
「〇〇禁止ね」と一方的に奪うより、
「今日は計算と漢字、算数の解き直しが終わったら30分」
「平日は30分、休日は宿題の進み方を見て決める」
「テスト前日は短めにする」
「ルールを破ったら翌日はなし」
という形にした方がよいです。
中学受験では、親子関係が崩れると勉強も崩れます。
禁止で支配するより、ルールで管理する。
その方が長続きします。
まとめ:中学受験では、親の言葉が子どもの逃げ場を奪うことがある
中学受験で親が言いがちなNGワードは、どれも親の不安から出ています。
「なんでできないの?」
「前にもやったよね?」
「みんなもっと勉強しているよ」
「塾代いくらかかると思っているの?」
「〇〇禁止ね」
親が言いたくなる気持ちは分かります。
しかし、これらの言葉は、子どもを前向きにするより、追い詰めることがあります。
中学受験では、塾だけでも十分に競争と比較があります。
家まで責める場所になると、子どもは逃げ場を失います。
親がやるべきことは、甘やかすことではありません。
現実を見ることです。
ただし、現実を見ることと、子どもを責めることは違います。
できなかった理由を分ける。
前にやった問題を類題で再現できるようにする。
他人との比較ではなく、今の課題を見る。
お金を理由に責めるのではなく、塾や家庭教師の使い方を見直す。
禁止ではなく、ルールを設計する。
この方が、中学受験は安定します。
親の言葉は、子どもを潰すためではなく、立て直すために使うべきです。

コメント